第24章 他人は自分より優って見える。
そして少しの間を置き、総悟が口を開く。
総悟「・・・・・。葵咲姉ぇは俺の姉代わりになってくれるって言いやしたよね?姉上はこんな時、俺の気がすむまで一緒に付き合ってくれやしたよ。」
静かに告げる生前の姉の事を聞き、葵咲は少し考えるように右手を顎に置き、視線を下に落とす。やがて総悟の方を向いて言った。
葵咲「確かに弟の我侭を受け入れるのは姉の役目だよね。でも弟を厳しく躾けるのも姉の役目ってもんでしょう?」
姉、ミツバと葵咲との違いを目の当たりにし、また、葵咲の真っ直ぐな意見に総悟は思わず吹き出す。
総悟「プッ。葵咲姉ぇは手厳しいや。」
総悟の笑顔を見た葵咲は、少し安心したように笑顔を返す。そして総悟の手の中にあるヤクルトを指差しながら言った。
葵咲「飲まないの?ヤクルト。飲まないなら私が飲んじゃうね、ヤクルト。」
総悟「葵咲姉ぇが飲みたいだけなんじゃないですか。」
有無を言わさぬ葵咲の発言に、総悟は真顔でツッコむ。
次の瞬間、葵咲は総悟の手から素早くヤクルトを奪い取り、一気に飲み干した。そしてすっくと立ち上がる。
葵咲「よし、じゃあパトロールに戻りますか。」
総悟「ってもう飲んでる!?ヤクルト!俺にくれたんですよね!?それ!!」
あまりの速さに総悟は目を奪われ、自分の手と葵咲とを交互に見やった。
そしてつられて総悟もその場に立ち上がる。
葵咲「ああ、コレ30秒以内に飲まないと爆発するやつだから。」
平然とした表情で、飲み終わったヤクルトの空き缶を指差しながら言う葵咲。それには思わず総悟もマジでツッコむ。
総悟「どんな仕組み!?」
葵咲「胃に溶け込ませないと爆発するんだよ。この間新発売してた。」
総悟「そんな危険な飲み物まず発売しないでしょ!!」
葵咲「ホラ、開封後はお早めにって書いてあるでしょ。」
総悟「それ絶対そういう意味じゃないと思います!!」
珍しい総悟のツッコミも虚しく消えさり、葵咲は何事も無かったかのように歩き出した。