第24章 他人は自分より優って見える。
総悟「土方さん、折角葵咲姉ぇがここまで呼びに来てくれたんですぜ?それはあんまりなんじゃねぇですかぃ?」
土方「食えねぇもんは食えねぇよ。」
総悟「だからそれが…。」
またもや喧嘩が始まりそうな二人を目の前にした葵咲は、止めるように割って入った。
葵咲「ああ、いいよそーちゃん。じゃあ土方さんの分はお弁当にして置いとくよ。食べたくなったら声掛けて。もしくは冷蔵庫に入れとくから勝手にレンジで温めて食べてもらってもいいし。」
土方「分かった。」
土方は短く返事をし、再び素振りへと戻る。そんな土方の邪魔をしまいと葵咲は総悟の背中を押して道場から出た。
総悟の背中をおす葵咲の腕には、以前縁日で土方がプレゼントしたブレスレットが付けられている。葵咲はその日以来、毎日ブレスレットを身につけているのだ。とは言っても、女中の仕事等で差し支えがある際には外しているが。
総悟「ちょ、葵咲姉ぇ…!」
葵咲「どうせまだ素振り何回残ってる~とかそんなんでしょ?何言ったって聞かないよ。変なトコ頑固だからね、土方さんって。」
総悟「・・・・・。」
(総悟:気にくわねぇ…。)
お互いを分かり合っている、そんな二人の様子は傍から見れば夫婦のようにも見える。
ブレスレットの事を知らない総悟は、それに関しては幸いな事なのかもしれない。土方から貰ったブレスレットを毎日身につけている等と知ったら、それこそ総悟は土方を暗殺でもしかねない。
夫婦のような二人を面白くないと思った総悟は拗ねたような表情を見せた。だがそんな総悟の心情になど気付いていない葵咲は、そそくさと食堂の方へと歩みだしてしまった。
総悟はその場に足を止め、葵咲の後姿を拗ねたままの表情で見つめていた。