第23章 笑いのツボは人それぞれ。
葵咲「クスッ。初めて、笑ってくれたね。」
神威「? 何言ってるの?俺はずっと笑ってたでしょ?」
葵咲の発言の意味がよく分からなかった神威は爆笑を止めて疑問を投げかける。葵咲は首を横に振って答えた。
葵咲「神威君、笑うの下手すぎ。笑顔に無理がありすぎだよ。今の、爆笑してる顔の方がずっといい。」
神威「・・・・・。」
“無理のある笑顔”とは、勿論いつものニコニコスマイルの事だ。作られたその笑みに、無理があったと葵咲は言ったのだ。
そんな葵咲の指摘を聞いた神威は少し考えた後、葵咲の腕をぐいっと引っ張り、自分の方へと引き寄せる。
葵咲「えっ?」
引き寄せられた葵咲は目を大きく見開く。
そして神威はそのまま葵咲の頬へと唇を落とし、葵咲の頬に付いていた返り血をペロリと舐めた。
葵咲「・・・・・。えぇぇぇっ!?」
葵咲は顔を真っ赤にし、舐められた頬を手で押さえながら慌てて神威から離れる。神威はいつものニコニコスマイルに戻っていた。
神威「イベントは結構楽しかったし、今のは面白かったよ。今日のところはほっぺで我慢してあげる。…ちょっと残念だけどね。今度また地球に来た時は、最後まで相手してもらうから。」
葵咲「えぇっ!?ちょ、それって…!!」
更に顔を真っ赤に染める葵咲。慌てふためく葵咲の姿を見て神威は笑った。
神威「あはは、冗談だよ。でも、また遊び相手にはなってよね。」
作られた笑顔ではなく、真剣な笑みを零して言う神威に、葵咲もまた真剣に笑顔を返した。
葵咲「うん、分かった。」
神威「じゃあ…。またね、葵咲。」
神威は持っていた番傘をさし、その場から歩き去った。
阿伏兎「・・・・・。」
すっかり殺気を削いでしまった神威の姿を、阿伏兎は陰から何かを考え込むように窺っていた。