第23章 笑いのツボは人それぞれ。
大江戸スカイツリー内は攘夷浪士の襲撃で大混乱状態である。
「殺れ殺れェェェェ!!」
「うぉぉぉぉ!!」
「キャァァァァァ!!」
浪士達の雄たけびと、逃げ遅れている客達の悲鳴が響き渡る。そこに、客の悲鳴ではなく、浪士の苦痛を含めた叫び声が上がった。
「ぎゃあああああ!!」
真選組に斬られたのか、そう思った別の浪士が叫び声のした方へと目を向ける。そこには真選組ではなく、白いタキシードを真っ赤に染めた神威の姿があった。
「あん?なっ、なんだてめぇは!!」
神威「折角人が楽しんでたのに。邪魔しないで欲しいなぁ。」
勿論、神威は刀など持っておらず、丸腰状態。素手で浪士の懐を貫いたのだ。
真っ赤な血で染められた指を舐めながらケラケラと笑う神威の姿を見た攘夷浪士達は、背筋に冷たいものを感じ、一歩後ずさった。
「!?」
神威「でもまぁ、感謝はしてあげるよ。戦場は俺の居場所だからね。」
血は血を呼ぶのか。望まずとも引き込まれる戦場に、神威は満足しているようだ。
そんな神威の後を今日一日ずっと尾けてきていた阿伏兎が見守っていた。神威の闘いに対する態度を見た阿伏兎は少し安心した様子である。
阿伏兎「…フッ。」
神威と対峙していたのは夜兎族の事を知らない攘夷浪士のようであるが、そのただならぬ百戦錬磨の雰囲気を感じとり、恐れをなし、腰を抜かす。
「ヒィッ!!」
だが、そんな攘夷浪士達に容赦なく神威は目を見開き、右手を叩き込もうとする。
だが次の瞬間、神威に後ろから抱きつき、その動きを止める人物がいた。
「待って神威君!!!」
神威「!?」
阿伏兎「!!」