第23章 笑いのツボは人それぞれ。
葵咲「ちょ、いきなりィィィ!?進行表と全然違うじゃんんんんん!!」
「なんか思ってたより盛り上がってるからさー。最初に一発かましときましょうよ。」
どうやらこのイベント司会者自身も、当初はそんなに盛り上がらないイベントだと思っていたらしい。だが、想像以上の盛り上がりに、更に盛り上げようとイベントの進行内容を勝手に変えてしまったようだ。
葵咲「それ全然進行表の意味ないじゃん!!」
神威「まぁいいんじゃない。」
若干パニック気味の葵咲とは対照的に、至って冷静沈着な神威。いつものニコニコスマイルで宥めるように葵咲の肩に手を置く。
葵咲「良くないってば!!」
そんなグダグダなイベント進行など気にも留めていない観客達は、沸き立った様子のまま手を叩きながら声を上げる。大江戸スカイツリーオープンという、その事だけで皆テンションが上がっている為だ。
「キース!キース!キース!」
観客達の歓声を浴びながら、神威は平然と葵咲に近寄る。
神威「皆こう言ってるし。」
葵咲「えっ、でも…!!」
神威は葵咲の顎に右手をかけ、くいっと顔を上げる。
そして左手を腰に回し、半ば強引に唇を近付けてきた。
葵咲「ちょ・・・・・っ!!」
神威の力は強く、振りほどけそうにない。葵咲はきゅっと目を瞑った。
そしてその様子を客席後方から見ていた土方は狼狽し、目を見張る。咥えていた煙草が口から零れ落ちた。
土方「っ!!!!!」
二人の唇が重なろうとしたその瞬間、ジリリリリと館内の警報が鳴り響いた。
すんでのところで神威は動きを止め、顔を離してきょとんとした表情になる。葵咲も瞑っていた目を開けて辺りを見回した。
「!?」
葵咲「な、何…?」