第22章 人違いはこじれてしまうとややこしい。
一方、会場舞台袖に来た葵咲と神威。
二人はとりあえず舞台袖にある椅子に腰掛ける。先程銀時から進行表を渡されていないと聞いたスタッフは、二人に進行表を渡した。
「はい、じゃあこれが進行表ね。目通しといて。」
葵咲「はーい。」
進行表を受け取り、イベントの一連の流れに目を通す葵咲。
そして最後の項目を見て、葵咲は固まった。
葵咲「・・・・え。ちょ、ちょっと待って!これ!最後!ち、ち、誓いのキスって!!」
“誓いのキス”、その項目を見た葵咲は、慌ててイベントスタッフに詰め寄った。だがスタッフは当然のようにケラケラと笑いながら言う。
「そりゃ結婚式には当然のイベントでしょ~。」
葵咲「いやでもこれはっ!!」
「いいじゃない。あ~んな事や、こ~んな事までしてる仲なんでしょ?ちゅーの一つや二つ。」
本当の恋人同士ならそうかもしれないが、葵咲と神威は今日初めて出逢った仲。そんな事しているはずがない。
だが今更人違いである事や、成り行き・興味本位でイベントへの出演を決めた事等は言えるはずもなく、咄嗟に別の言い訳で誤魔化してみた。
葵咲「ややや、でも赤の他人の集まる公衆の面前でするなんて!!」
「はいはい、もうすぐイベント始まるから。」
葵咲の言葉になど耳を傾けようともしないイベントスタッフ。スタッフはそのまま別の場所へと去っていってしまった。
葵咲「ちょっとォォォ!!??」
神威「あらら、もしかして計算違いだった?」
葵咲の慌てっぷりを見て、神威は尋ねる。勿論その顔はいつもの心情を読み取れないニコニコスマイルだ。
葵咲「だっ、だってコレ!神威君も嫌でしょ!?」
神威「俺は別にいいよ。お姉さん相手なら。なんなら最後までヤっちゃう?公開プレイってのも楽しいかもよ?」
葵咲「なっなっ!何言ってんの神威君!!」
神威に同意を求める葵咲だったが、神威は嫌がる素振りなどは見せやしない。むしろこの状況を少し楽しみ、案外ノリ気なその態度に、葵咲は顔を真っ赤にして後ずさった。
そしてスタッフが二人に声を掛ける。
「はーい、では舞台の上に上がって下さーい。」
神威「ほら、呼ばれたよ。行かないと。」
スタッフに呼ばれて神威は立ち上がる。そして葵咲の手を引いて舞台の表へと歩を進めた。
葵咲「えぇっ!!ちょ…!ええぇぇぇっ!!!」