第22章 人違いはこじれてしまうとややこしい。
葵咲と神威は大江戸スカイツリーの前まで歩いてきていた。
大江戸スカイツリーはこの日がオープン。かなり多くの人が訪れており、人ごみでごった返していた。
葵咲「うわー!高い!流石634m!!これ知ってる?ムサシなんだよ、ムサシ!!侍の国って感じがするよねー♪」
神威「へぇ~。そうなんだ~。」
興奮する葵咲とは対照的に、棒読みで感想を述べる神威。この興奮を分かち合いたい葵咲は、神威に同意を求めようとした。
葵咲「ちょ!テンション低っ!!テンション上げていこうよ!このスカイツリーが如く!!」
神威「アンタは天に昇れば良いと思う。このスカイツリーが如く。」
冷たく言い放つ神威。どうやら自分の話を全く聞いてくれない葵咲に対して少しむくれているようだ。
そんな神威に動じる事もなく、葵咲は大江戸スカイツリーの良さについて語ろうとするが、それを遮るように声を掛けられた。
「あっ!いたいた~!探したよ~!!」
葵咲「え?」
葵咲達が振り返ると、そこには大江戸スカイツリーのイベントスタッフらしき男が立っていた。
「早くこっち来て着替えて!!」
葵咲「? 何の話ですか?」
自分達ではなく、誰か別の人間に話しかけているのかとも思ったが、スタッフとバッチリ目が合う。スタッフは間違いなく葵咲達に話しかけているようだ。
「アンタらだよね?日傘さしたオサゲと渋い緑色の着物着た長髪!ささ、早くしないとイベント始まっちゃうよ!」
葵咲「あ、ちょ、ちょっと!」
スタッフの男は、半ば強引に葵咲と神威の二人の手を引き、大江戸スカイツリーの関係者入口から二人を案内した。