第21章 遊びの計画は他人任せが楽で良い。
そんな葵咲の心情など知る由もない神威は、葵咲に笑顔を向けた。
神威「じゃあ俺が殺してあげよっか?」
葵咲「えっ?」
攘夷浪士も侍である事に代わりはないのだが、今、神威の興味の矛先は女侍である葵咲にある。自分の興を削がれたくない神威は、自分が邪魔な浪士達を一掃する事を提案したのだった。
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇよ!!」
神威「・・・・・。」
神威が攘夷浪士達に飛び掛ろうとしたその時、葵咲がその腕を掴んで制した。
葵咲「ダメだよ、殺しちゃ。」
神威「!」
神威の腕を押さえる葵咲の力は、思っていた以上に強く、神威は動くことが出来なかった。
そして葵咲は神威を庇うように前へと一歩進み出る。
葵咲「それに貴方をこんな事に巻き込むわけにはいかないです。私のお客さんなので私が片付けます。」
それは一瞬の出来事だった。葵咲は発言を終わると同時に自らの刀を抜き、攘夷浪士達の着物の帯を切った。
「!? ぎゃーっ!着物がァァァァァっ!!」
帯を切られた浪士達は着物がはだけたり、袴が落ちたりして慌てて自分の露出部分を隠そうとする。
葵咲「どうする?続ける?」
「退散!退散んんんん!!」
浪士達は着物や袴を押さえながら走り去っていった。
葵咲「あっ!コラ!待ちなさーい!!…しまった、逃がしちゃった…。まぁいっか。」
今や葵咲は真選組隊士。攘夷浪士を捕まえる事が仕事だ。浪士達を逃してしまった事を一瞬焦ったが、逃げてしまったものは仕方がないとすぐさまそれを諦めた。土方が見ていたら怒りそうな態度であるが。
一方神威は、器用な葵咲の闘いぶりに、更に興味を示した様子だ。
神威「へぇ、お姉さんなかなか強いね。動きも早かったし。それに何ていうか、器用?」
葵咲「いえ、そんなことは…。それより怪我はないですか?」
今度は葵咲は真選組隊士として、というよりは元護り屋の性分として相手を思いやる言葉を放った。それに対して神威はいつものニコニコスマイルで答える。
神威「俺は全然。俺に敬語使わなくていいよ。そういうの、なんか慣れないしさ。」
葵咲「うん、分かった。えっと~…。」
神威「俺は神威。イチムラキサ、だっけ?」
お互いの名前を確認し、簡単な自己紹介を済ませる。