第21章 遊びの計画は他人任せが楽で良い。
葵咲「よっ!・・・・えっ!?」
飛び降りる先の道を見て驚愕する葵咲。ちょうど自分が降り立つであろう道には、人が歩いていたのだ!
その人物は番傘をさして悠々自適な素振りでのんびりと歩いている。葵咲の気配には気付いていない様子だ。
葵咲「どいてどいてェェェ!!」
「ん?」
葵咲の声に気付いた番傘の男は、特に驚く様子もなく、何食わぬ顔でひょいっと飛んで避けた。葵咲は人とぶつかりそうになった事に慌ててバランスを崩し、そのまま不時着。派手に転んでしまった。
葵咲「…ほ、ホントにどくだけなんですね…。受け止めてくれたりなんか…しないんですね。」
あわよくば、その人物に受け止めてもらえるのではと少し期待していた葵咲だったが、落ちたところをイケメンがお姫様抱っこで受け止める、といったような少女漫画のような展開にはならず、その期待はあっさり裏切られた。そのあっさり具合にちょっとショックを受けて、思わず感想が口から零れてしまっていたのだった。葵咲の質問に対し、番傘の男はニコニコした表情で返す。
「なんで俺が見ず知らずの女を受け止めなくちゃいけないの?」
葵咲「…ですよねぇ~…。あいたたた…ん?その番傘って…。」
葵咲は起き上がり、着物についた砂埃を払いながら男を正面から見る。男は番傘にオサゲといった風貌。そう、神楽の兄、神威だ。
勿論、神楽の兄である事など知らない葵咲は、男の番傘を見て自らの考察を話した。
葵咲「もしかして夜兎族ですか?」
神威「へぇ~よく知ってるね。」
葵咲「夜兎族の女の子の友達がいるので。」
“夜兎族の女の子の友達”とは、勿論神楽のことである。
葵咲の言う夜兎族の女の子が神楽である事に気付いた神威は神楽の特徴を話した。
「それって、髪の毛左右お団子にしてる、『アルアル』言う子?」
葵咲「もしかして神楽ちゃんのお知り合いですか?」
「知り合いっていうか、一応親族?かな。」
自らを神楽の親族と述べる男に対し、葵咲は神楽と重ね合わせてその感想を漏らした。
葵咲「あっ!もしかして神楽ちゃんのお兄さんですか!?言われて見れば似てるかも!神楽ちゃんに会いに来たんですか?」