第21章 遊びの計画は他人任せが楽で良い。
先日の囮捜査から数日が経ったある日、葵咲は再び有給休暇を取得していた。正確には振り替え休日と言うのだろうか。土方と縁日に出掛けた休日は、折角の休みが事件で潰れてしまった為、近藤達が葵咲を気遣って仕切りなおして欲しいと提案したのだった。
この日、葵咲は一人街へと出掛けていた。
葵咲「今日は待ちに待った…フフフフ~ン♪」
どうやらこの休日は、葵咲にとって“待ちに待った”日。何か楽しみがある日に合わせて振替休日を取得したらしい。
葵咲が上機嫌で歩いていると、攘夷浪士と思われる男が五人、葵咲の前に立ちはだかった。
葵咲「ん?」
「姉ちゃん、ちょっと俺達に付き合ってくれや。」
男達は今にも刀を抜きそうな剣幕だ。だが、そんな空気は読めずに葵咲は思ったままの意見を述べた。
葵咲「初対面の人と、いきなりお付き合いはちょっと…。」
「ちげーよ!バカかてめェェェ!!そういう意味じゃねーよ!顔貸せっつーことだよ!!」
男のツッコミを聞いた葵咲は、なるほど、と軽く手を叩いた。だがやはり顔を曇らせて更に自らの意見を押し通そうとする。
葵咲「あの、すみません。ア●パンマンじゃないんで、顔、取れないんですけど。」
「誰も顔だけ貸せなんて言ってねーよ!!バカにすんのもたいがいにしろやァァァ!!」
葵咲「!!」
頭に血が上った攘夷浪士達は、一気に刀を抜く。
「てめぇ真選組だよな?ここで潰させてもらうぜ。」
葵咲「・・・・・。」
どうやら攘夷浪士達は葵咲の事を知っており、一人で歩いているところを狙ったらしい。攘夷浪士達と対峙し、葵咲も刀を抜く…かと思いきや。
次の瞬間、葵咲は回れ右をして走り出した。
葵咲「今日はオフなので!ごめんなさァァァい!」
「えぇぇぇぇ!!??ちょ、待てェェェェェ!!」
まさか葵咲が逃げ出すとは思っていなかった攘夷浪士達は、一瞬怯んでしまう。だがすぐさまその状況を理解し、急いで葵咲の後を追いかけたのだった。
葵咲は住宅街の方へと走ってきていた。そして階段を上り、公園へと入って遊歩道を駆け抜ける。だが、なかなか浪士達を撒けそうにない。そう思った葵咲は、思い切って遊歩道の柵を跨ぎ、三メートルくらいの高さはあるであろう、公園の外の下道へと飛び降りた。