第20章 下心は知らないうちに懐に忍び込む。
近藤「仕方ない…じゃあ…腰に手を回せ。」
だがその訂正された提案は、先程の提案と大差ない、いやそれ以上に行動に起こしづらいものだったのだった。
土方「もっと出来るかァァァァァ!!」
近藤「じゃあ肩に手を置く?」
土方「どれも変わんねーだろ!ふざけんな!!」
近藤「ふざけてる場合じゃないのはトシ、お前の方だぞ。しっかりやらねぇと捕まえられるもんも捕まえられなくなっちまう。頼んだぞ。」
土方「あっ、ちょ!近藤さん!!」
そう言って近藤は一方的に無線を切ってしまったのだった。
土方は眉を寄せてその場に佇んだ。
土方「・・・・・。」
葵咲「土方さん?」
土方の少し前を歩いていた葵咲は、土方が後ろで立ち止まっている事に気付き、振り返って土方に問いかけたのだった。その問い掛けに気付いた土方は、慌てて何でもない素振りで返す。
土方「え?あ、いや、何でもねーよ!」
二人は再び歩き出した。そして土方は考える。先程からの葵咲の転び具合を思い出したのだ。これは違う意味でも手を繋いだ方が葵咲の安全に繋がるのだろうか?そう思い直し、土方は葵咲の手を取ろうと試みる。だが照れや恥ずかしさもあり、すんなりとは繋げずに手が泳いでしまった。
その時、葵咲が声を上げた。
葵咲「あっ、万事屋さん。」
土方「え?」
銀時「ん?」
葵咲の視線の先には鉢巻を巻き、はっぴを着て屋台への呼び込みをする銀時が立っていた。銀時の後ろの屋台の中には新八と神楽も同じ格好をして店番をしている。どうやら万事屋としてこの屋台の手伝いに来ているようだ。
葵咲に気付いた銀時は葵咲の方を見やり、そして葵咲の手に土方の手が伸びてきているのを目撃してしまったのだった。
銀時「てめっ!今こいつに何しようとしてやがったァァァ!!」
その問い掛けに土方は慌てて自らの手を引っ込める。
土方「べっ!別に何もしてねーよ!!」
銀時「嘘付けェェェ!今明らかに手ぇ繋ごうとしてソワソワしてただろうがァァァ!!」
土方「んなわけねぇだろォォォォォ!!」
二人はいがみ合う。