第19章 トゲトゲしてるだけで、何か強そうに見える。
その事情とは、土方の予想していたものとは違い、恐るべき事実だった。
土方「…高橋一派の残党が?」
山崎「ええ。葵咲ちゃんを狙ってるらしいんです。」
二人の話によると、どうやら葵咲が真選組に入るきっかけになったとも言える事件、攘夷志士の高橋逮捕の一件で、捕まえきれなかった残党が高橋逮捕を逆恨みし、葵咲を狙っているらしいというのだ。
土方「だったら屯所から出るべきじゃねぇだろ。市村にそう指示すりゃいいだけの話だろうが。」
山崎「それ葵咲ちゃんが素直に聞き入れると思います?」
土方「・・・・・。」
確かに、先日の攘夷浪士による立てこもり事件からしても、葵咲は黙って見ているタイプではない。この件を聞いたら、しかも自分が関わっているとなれば尚更、黙ってはいないだろう。
近藤「葵咲ならきっと自ら渦中に飛び込むタイプだろう。」
土方「あー…まぁ確かに。」
立てこもり事件を思い出した土方は、二人の意見に素直に納得した。そして山崎が続ける。
山崎「かと言って放っておいて、一人で買出しにでも行かれたら、それこそ危険ですからね。」
近藤「奴らの動向もまだ明確に掴めていないからな。これは囮捜査も兼ねているんだ。葵咲がプライベートで出掛けてたら奴らが狙ってくると思ってな。そこを俺達が現行犯逮捕する手筈なんだ。」
その近藤の意見に対しては、土方は異議を唱えた。
土方「囮捜査って…それ本人に知らせてなきゃ危険すぎんだろうが。」
山崎「話しちゃったら仕事になっちゃうじゃないですか。折角取ってくれた休みなのに。」
近藤「だから俺達で何とかするつもりだったんだよ。勿論あいつに危険が及ぶ前に捕まえるつもりだ。」
この意見は、真選組隊士としてというよりは、人間味を持った人としての意見だった。