第19章 トゲトゲしてるだけで、何か強そうに見える。
土方「おい待てって!」
急いで葵咲の後を追う土方。葵咲はお目当ての屋台の前でしゃがみ込んでいる。
訪れた屋台は、かんざしやブレスレット、指輪やネックレスなど、アクセサリーを売っているお店だった。屋台へと訪れた土方も葵咲の横へと腰を下ろした。
土方「…ったく。」
葵咲は店頭に並んだ商品をじっと眺めていた。土方もそんな葵咲の視線の先に目をやり、問い掛けた。
葵咲「・・・・・。」
土方「何か欲しいもんでもあんのか?」
葵咲「あっ、いえ…。こういう雰囲気のお店っていいな~って思っただけです。行きましょう。」
土方に声を掛けられて我に返ったように返答する葵咲。
そして葵咲は立ち上がり、別の屋台へと足を向けた。
土方「・・・・・。」
何かを考え込むように土方が葵咲の見ていたアクセサリーを売っていた屋台を見ていると、またもや銃声のような音が耳に届いた。
(土方:! …気のせいじゃねぇ、今のは確かに…)
そう思い、土方は急いで葵咲の方へと目を向け、注意を促す。
土方「おい市村、気を付けろ、銃声が・・・・」
葵咲「土方さん見て見て!ウニすくいがあるよ~!」
葵咲は銃声には全く気付かず、次の屋台、ウニすくいのお店の前で腰を下ろしていた。しかも、土方の話にも耳を傾けず、自分はさっさとお金を払ってウニすくいを堪能している。
土方「人の話を聞けェェェェェ!!つかウニすくいって何ィィィィィ!?」
ウニすくいとは。金魚すくいのウニバージョンのようだ。勿論、すくう道具は金魚すくいと同じものだ。当然のことながら、水でふやけたポイは、すぐさま破ける。相手が金魚ではなく、トゲトゲのウニであるからなおのことだ。
葵咲「あ~っ、破れちゃった~。」
「残念!おしかったね~!」
土方「全然おしくねぇだろ!こんな薄い紙破れねぇ方がおかしいだろうが!!」
的確なツッコミをする土方。だが、屋台の店主は別の意味だと捉えたらしい。
「誰の髪が薄いんだコラァァァァ!!」
土方「そっちの髪じゃねェェェェェ!!」
屋台の店主の髪は薄く、俗に言うバーコードヘアーだったのだ。