第19章 トゲトゲしてるだけで、何か強そうに見える。
二人が呉服屋を出てから少し時間が経ち、夕暮れ時。場所は変わって水無月神社。土方と葵咲は店を出た後、少し街中を散歩がてらぶらぶらしてから、水無月神社へと訪れたのだった。
水無月神社は割りと大きな神社で、この日の縁日も盛大に行われていた。
屋台はたこ焼き、ベビーカステラ、りんご飴、射的にわたあめ等、様々なお店が出ている。屋台は神社の中だけではなく、外にまで並んでいた。
時間的にまだ始まったばかりであろう縁日であったが、思っていた以上に人は多く、屋台も賑わっていたのだった。
葵咲「わぁー屋台がいっぱい!どうしよう!ねぇ、どれから行く?まずはたこ焼きかな!?」
入口のところにあるたこ焼き屋を指差しながら葵咲が声を上げる。屋台を見てはしゃぐその姿は、年頃の娘というよりは、まるで子どものようだ。
そんな様子を見て土方は、少し呆れた顔で、でも少し微笑みながら言った。
土方「おい、んな慌ててっとすっ転ぶぞ。」
ドガシャーッ!!
土方のそんな忠告を聞いてか聞いていないでか、葵咲は近くの屋台に向かって転がり込んでいった。
土方「って転びすぎィィィ!!何が起きたの今!!」
思わずツッコむ土方。転んだ葵咲のもとへ向かおうとしたその時、パーン!という銃声のような音が聞こえてきた。
土方「!?」
一先ず足を止め、警戒して辺りを見回す土方。
だが、怪しい人影のようなものはなく、至って平和な祭りの風景だった。
土方「・・・・・。」
なおも警戒して辺りの様子を伺っていると、また銃声のような音が聞こえてきた。土方はその音のする方に目を向ける。するとそこには射的の屋台があった。
「は~い、残念~また来てね~。」
「っちぇ~っ。」
土方の視線の先には射的の店主と子どもが会話をする姿があった。その様子を見て、土方は先程の銃声も射的の音だったのだろうかと思い直し、一先ず葵咲のもとへと歩み寄った。
葵咲「…ったぁ~…。」
土方「ったく、何やってんだよ。ホラ。」
そう言って葵咲に手を差し伸べる土方。葵咲もそこは遠慮せずに土方の手を取り、起き上がらせてもらったのだった。
葵咲「あ…。す、すみません。」
二人が手を取り合っている姿を、神社内の街灯の当たらぬ木陰から覗き見ている妖しい二人組がいた。