第18章 さりげない気遣いの出来る男、それがモテる男。
浴衣の購入に付き合わせてしまったという事だけでも申し訳ないという気持ちがあるのに、更にお金まで払ってもらっては、本当に申し訳がたたない。だが、断固として金額を言わない土方に、葵咲は何か別の形でそのお返しをしようと考えた。そして初めて土方に出会った時の事を思い出し、こんな提案をした。
葵咲「…じゃあ、今日一日、身体はって返します!!」
土方「そのネタはもういいわ!!」
悪夢のような初会の記憶を蘇らせ、土方は断固として拒否した。その時、何者かの視線を感じた土方は、後ろを振り返った。
土方「…ん?」
葵咲「どうかした?」
土方「いや…。気のせい…か。」
自分達の歩くかなり後方にまで目を凝らしてみたが、特に怪しい気配などはない。土方は再び前を向いて歩き出した。
二人が再び歩き出した事を路地の脇から見守る二つの陰があった。
山崎「流石は副長ですね、俺達に気付くなんて。」
近藤「そうだな。やっぱりアイツに任せて正解だったな。」
そう、今回のこの提案を持ちかけた二人、近藤と山崎だ。どうやら二人は土方と葵咲が屯所を出た時から後をつけてきていたらしい。真選組の制服は目立つ。その格好からバレないようにと、二人も私服姿で後をつけていた。前を歩く土方と葵咲の様子を見ながら、近藤が口を開いた。
近藤「なんかトシと葵咲いい感じじゃね?」
山崎「そうですね、思ってた以上に良い雰囲気ですね。」
近藤に言われて、山崎も同意する。そして更に近藤は言った。
近藤「このままゴールインしちまったらどうするよ?俺、結婚式のスピーチでも考えとくかな。」
山崎「局長、気が早すぎです。」
こちらの意見には賛同出来ず、ツッコんでしまう山崎だった。