第18章 さりげない気遣いの出来る男、それがモテる男。
だが、そんな土方のツッコミは耳に届いていないのか、葵咲は真剣な表情で手に持っていた浴衣を見つめながら言った。
葵咲「それは凄いですね…!じゃあコレにしようかな…。」
土方「その話の何処に凄い要素があったの!?お前もまんまと騙されてんじゃねーよ!!」
怒鳴った際に葵咲が手に持っていた浴衣を見た土方。その浴衣を見て何かを言いたそうに葵咲の方へと歩み寄り、近くに掛けてあった別の浴衣を手に取りながら言った。
土方「つーかなんでそんな地味な色ばっか選ぶんだよ。こっちの赤とかピンクの方がいいんじゃねぇか?」
確かに葵咲の手に取っていた浴衣は暗い紫色で、かなり地味なデザインだった。その他に見ていた浴衣もセピアや鼠色、小豆色など、どちらかというと年配者が好みそうな渋い色合いばかりだった。
折角の縁日、新たに浴衣を購入するのだから、年頃の娘に相応しい明るめの色を土方は勧めたのだった。
葵咲「そ、そんな可愛らしい色私には似合わないよ。」
土方「着てみなきゃ分かんねーだろ。」
土方の提案を拒否する葵咲だったが、土方はそれを無視し、半ば強引に明るく可愛らしいデザインの浴衣を選び出した。その様子を見ていた女性店員が土方と葵咲に声を掛けてきた。
「試着してみますか?」
葵咲「えっ。でも…。」
土方「じゃあこれとこれと…あと、これも着せてみてくれ。」
「かしこまりました。」
あまり気乗りのしない葵咲だったが、土方と店員に促されるまま、試着室へと入って行った。