第18章 さりげない気遣いの出来る男、それがモテる男。
山崎「休みの使い方、羽の伸ばし方を知らない娘ですから。副長が縁日にでも連れ出してゆっくりさせてあげて下さい。」
土方「だったら総悟の方が適任じゃねぇのか?あいつなら喜んで一緒に行くだろ。」
近藤「総悟はダメェェェェェ!!」
最もな意見を言ったはずの土方だったのだが、物凄い剣幕で近藤はそれを否定した。
あまりの勢いに、土方は驚き、目を見開いた。
土方「!? なっ、なんでだよ。」
その問いかけには近藤ではなく、山崎が取り繕うように答えた。だが、その返答は至って不自然で、何かを隠している様子だった。
山崎「ほっ、ほら、沖田隊長はハメ外しすぎちゃう可能性があるでしょ?だから副長の方が適度にハメを外せて適任だと思います!」
土方「・・・・・な~んか怪しいな、お前ら。」
山崎の妖しい言動に何か裏があると踏んだ土方は、片眉を上げて、近藤と山崎を交互に見やる。その眼光の鋭さに圧倒されながらも、負けまいと山崎はなおも必死に抵抗するように答えた。
山崎「なっ、何も怪しくないですよ!皆葵咲ちゃんが心配なだけです!それに部下を気遣ってあげるのも上司の務めってもんでしょう!!」
土方「…まぁいい。有休余ってんのは事実だしな。」
どれだけ睨みをきかせても、それ以上は二人が白状しそうにないと見た土方は、渋々二人の提案を飲んだのだった。そして近藤と山崎は、念を押すように土方に言った。
山崎「くれぐれも葵咲ちゃんの事、お願いしますよ?」
近藤「トシ、頼んだぞ!くれぐれも葵咲から目を放すんじゃないぞ!」
土方「? ・・・・・。」
土方は結局二人が何を隠しているのか、何を企んでいるのかは見抜けず、怪訝な顔をしたまま近藤の部屋を出た。
土方が近藤の部屋を離れるのを待ち、暫く沈黙が続いたところで山崎が口を開いた。
山崎「とりあえずは上手くいったみたいですが・・・・大丈夫ですかね?副長…。」
近藤「トシはやるときゃやる男だ。そうと決まれば葵咲の事しっかり見ててくれるだろう。」
そうして二人は互いに目を合わせて頷き、山崎も近藤の部屋を後にした。