第18章 さりげない気遣いの出来る男、それがモテる男。
土方は近藤に追い討ちをかけるように、近藤の胸ぐらを掴み、近藤に自らの顔を近付け、近藤の目を覗き込みながら言った。
土方「だったらこっち見て喋れ。」
近藤「なんだよ!目ぇ見て喋るとか恥ずかしいじゃん!俺シャイなんだよ!お前も知ってんだろ!?シャイだからお妙さんに声掛けられずにいつも陰から見守ってんの!妖精のように!」
自らの目を覗き込んで来る土方からは、顔を背けて必死に抵抗する近藤。だが、そんな近藤に土方は容赦しない。
土方「妖精じゃねぇよ、それただのストーカーっつーんだよ。つかアンタの場合、喋りかけながらストーカー行為働いてんだろうが。」
近藤「うるさいよ!とにかくお前は俺の言う事聞きなさい!」
苦し紛れに、上司という立場を利用しようとした近藤だったが、そこで近藤の部屋の襖が開いた。
山崎「局長、誘導下手すぎです。」
現れたのは真選組の監察、山崎退だった。山崎は近藤の企みを知っている様子である。
近藤「あぁっ!ザキ!!なんでバラすの!俺が必死で頑張ってんのに!!」
山崎「もう無理でしょ。アンタに期待した俺がバカでした。」
土方「どういう事だ?ちゃんと説明しろ。」
土方は、近藤を掴んでいた手を放し、山崎に向かって言った。山崎は少し呆れた表情で近藤の隣に座り、訳を説明した。
山崎「・・・・・。葵咲ちゃんを何処かへ連れ出してあげて欲しいんです。彼女の息抜きの為に。」
山崎の申し入れを聞いた土方は吸い終わった煙草を、持っていた携帯灰皿で消しながら、承諾するのではなく、思ったままの感想を述べた。
土方「息抜きなんか上司が一緒にいちゃ出来ねぇだろうが。」
山崎「確かに普通ならそうなんですけどね。でもあの娘(こ)の場合は違うって副長も分かってるでしょう。有休取らせるのにも苦労したんですよ。あの娘(こ)は誰かが何処かに連れ出してあげない限り、休み関係なく勝手に仕事探して働いちゃいますよ。」
土方「・・・・・。」
山崎の言う事は的を得ていた。
葵咲は真選組に訪れた当初から放っておけば自らに負担がかかる程、仕事を抱え込んでしまうタイプだった。
産業医面談等で少しは軽減されたが、それも束の間の事。正式に真選組隊士となってからは仕事量がまた増えつつあるのだった。