第18章 さりげない気遣いの出来る男、それがモテる男。
ある日の夕方、土方は近藤から呼び出され、近藤の部屋へと訪れていた。
そして土方は、近藤から突然の提案を聞き、あまりの突飛な提案に思わずオウム返ししてしまったのだった。
土方「休み?」
近藤「ああ。明日は一日休みを取ってくれんか。」
近藤が自分に休みを取れと言い出すなんて至って珍しい事だった。故に土方は少し怪訝な顔をして、その意図を問い返した。
土方「なんだよ急に、何かあったのか?」
近藤「お前ここんトコ働き詰めだったろ。ここらへんで休みでも取った方がいいだろうと思ってな。」
土方は煙草に火を点け、眉を寄せて言った。
土方「休みなんざ別に必要ねぇよ。」
近藤「まぁそう言うな。今は攘夷浪士どももなりを潜めている。いざという時の為にも、休める時に休んでおいた方がいいだろう。」
珍しくまともな事を言う、そう思った土方は、煙草の煙を吐き出しながら、頷いた。
土方「まぁ…それも一理あるな。」
近藤「だろ?じゃあ明日は有休決定な!」
土方「? あ、ああ。」
近藤は、自分の提案を承諾する土方に対して、満面の笑みで言葉を返した。人が休む事がそんなに嬉しいのか、そう疑問に思った土方は片眉を上げて更に怪訝な顔つきになる。
そして近藤は何かを思い出したような素振りを見せた。
近藤「あーっ!そういえば明日は水無月神社で縁日があるらしいぞ!」
その素振りは至って不自然であった。
そしてその不自然な様子のまま、更に不自然に会話を続けた。
近藤「…あぁっ!そういや確か明日は葵咲も休みだったな!」
土方「・・・・・。」
近藤「どうだ?葵咲を誘って二人で縁日にでも…。」
土方「おい。」
近藤「え?」
近藤が何を企んでいるのか、なんとなく読めてきた土方は、近藤を睨みつけながら、その提案を途中で遮った。
土方「てめぇ何企んでやがる。」
近藤「べっ、べっつにぃ~。企んでなんかいねぇよ?ただ思いついたまま口にしただけで…。」
図星の近藤は冷や汗を垂らしながら、土方から目を逸らす。