第16章 天然パーマの奴から巻き上げろ。
土方と葵咲は、現在立て篭もり事件の起きているビルの手前の路地まで来ていた。
他の真選組や奉行所の者はまだ到着していないようで、ビルの周りには誰もいない。どうやら二人が一番乗りのようだ。
葵咲「あのビルですね。」
二人は建物の影から覗き込むようにビルの入口を見やる。ビルの入り口には攘夷浪士と思われる男が五人、銃や刀を手にして立っていた。その様子を見た土方は、葵咲に屯所へ帰るよう促した。
土方「市村、お前は屯所に帰ってろ。」
葵咲「!?土方さんはどうするつもりです?」
土方「俺ァビルに突入する。」
葵咲「一人じゃ無茶ですよ、私も行きます。」
土方は自分の配慮などお構いなしに、食い下がろうとする葵咲に驚いた。
土方「ハァ!?何言ってんだよ!?」
葵咲「私だって真選組隊士です。隊士になったら容赦しないって言ったのは副長でしょ?」
土方「だからってこれは流石に危険だ。奴ら拳銃持ってやがる。お前は…。」
葵咲「女だからって関係ありません。」
自分の言おうとした台詞を先に言われ、思わず口ごもる土方。少し考え、台詞を言い直した。
土方「・・・・じゃあお前に重要な任務を言い渡す。屯所に戻って近藤さんに知らせて来い。そして増援を呼んで来い。」
葵咲「さっきと言ってる事同じじゃないですか!」
土方「上司の命令に逆らうつもりか?」
葵咲「…要するに増援が来ればいいんですよね?じゃあ万事屋さん、お仕事お願いします。」
断固として引き下がらない葵咲は、いつの間にか背後に来ていた銀時に仕事を依頼した。
銀時の存在に気付いていなかった土方は振り返り、思ったままの感想を述べた。
土方「…なんでお前がここにいんの?」
銀時「なんだよ、いちゃ悪ィかよ。」
土方「なんでついてきてんだって話だよ。」
銀時「あんな目の前で話聞いて、放って帰れるかよ。うちの妹危険な目に合わされちゃたまんねぇだろうが。」
土方「だからいつからお前の妹になったんだよ!」
二人のやり取りは受け流し、葵咲は銀時の方を向いて真剣な眼差しで提案した。