第15章 男は女に転がされるぐらいがちょうど良い。
そのツッコミに対して、葵咲は少し驚いたような表情をする。
そして、表情を崩して吹き出しながら言った。
葵咲「クスッ。あの人と同じ事言ってる。その人にも同じ事言われたよ。余計な事考えずに自分の身を護ることだけに専念しろって。」
笑いながらその人物の事を話す葵咲の表情は、とても生き生きしていて、暖かいものだった。そんな葵咲を土方は何も言わずにじっと見つめた。
その視線に気付いた葵咲は、ふと現実に引き戻されたように、土方の方を見て苦笑しながら言った。
葵咲「…あっ、ごめんなさい、つまらない昔話でしたね。」
土方「いや…。」
土方は何とも言えず、短く言葉を返した。
土方が葵咲から目をそらそうとして視線を下に向けた時、葵咲の胸元に、キラッと光るネックレスがあるのが目に入った。そのネックレスというのは、リングをチェーンに通した形の、至ってシンプルなネックレスだった。
この日は稽古用の袴を身につけていた為、胸元が少し空いていたのだ。とは言っても、胸にはサラシを巻いていた為、色気等はない。
土方「お前、アクセサリーとかつけるんだな。」
葵咲「あ、ごめんなさい、アクセサリーは禁止ですか?」
土方「いや、そんな事はねーけど…お前がそういうのつけてるのって何か意外だと思ってな。」
普段から地味な装いをしている葵咲。アクセサリーを身につけるタイプには見えなかったからだ。
土方「大事なモンなのか?」
葵咲「え?…ええ。まぁ…。」
土方「?」
“大事な物”という問いかけに対しては、少し表情を曇らせる葵咲。何か訳ありのようにも思えたが、土方はそれに対しては特に掘り下げなかった。そして土方が続ける。
土方「普段は別に構わねぇが、稽古中は外しておけ。引っかかったりしたら危ねぇだろ。大事なモンなら尚更な。」
葵咲「あ、はい。分かりました。」
土方はそれ以上は何も言わず、その場を静かに立ち去った。