第15章 男は女に転がされるぐらいがちょうど良い。
その頃、土方に呼び止められた葵咲は、縁側に腰を下ろしていた。その隣には、並んで座るように土方も腰を下ろしている。
土方「俺に気ィ使ったんだろ。隊士達の前で副長である俺が、お前に破れりゃ威厳がなくなるってな具合か?」
葵咲「考えすぎだよ。私が何も言わなくても私はあなたには勝ててなかった。力も経験値も土方さんの方がはるかに上でしょう?」
微笑みながら言う葵咲に、苛立ちを覚える土方。全てにおいて自分が下になった気がするからだ。
土方は、親に宥められて拗た時の子供のような表情で、葵咲の方を見た。
土方「お前みてぇな戦い方をする奴を相手にするのは初めてだ。そういう意味では俺の方が経験値は下だろうよ。」
ふてくされた様子の土方を見て、葵咲は苦笑いになる。
そして少し間を置いて、土方を納得させるように話しだした。
葵咲「…私が剣術を始めた理由は、他の人とは違うと思うから。ただ自分の身を護る為のもの。戦う目的が違うから、戦術も違ってくるんだよ。」
葵咲の話す戦術の違いを聞き、ふと、葵咲の持つ愛刀『雪月花』の事を思い出した。そして頭に浮かんだ疑問をそのままストレートにぶつけた。
土方「お前に剣術教えたのは、あの刀をくれた奴か?」
『あの刀』、そう言われてその事が雪月花の事だと理解するまでに少しの時間がかかった。
少しの間を置いて雪月花の事を理解した葵咲は、少し目を細め、懐かしむように土方の質問に答えた。
葵咲「…うん。私はその人の邪魔にだけはなりたくなかったんだよ。まぁあの頃は私も幼かったからなぁ~。自分よりはるかに強いその人の事もいずれは護るつもりで教えてもらってたんだけど…。」
土方「護りたい相手に教えを請うっておかしいだろ。」
土方は思ったままをツッコんだ。