第15章 男は女に転がされるぐらいがちょうど良い。
一方、道場内には、近藤、総悟、山崎の三人が残っていた。
山崎は道場内の片付けをしている。総悟は道場の隅で壁に持たれかかりながら、竹刀を抱いて座っていた。
そんな総悟の様子を見て、近藤が総悟に近付いてきた。近藤が総悟の横に腰を下ろすと、総悟は先程の土方と葵咲の試合について感想をこぼした。
総悟「土方さんは情けねぇや。葵咲姉ぇに翻弄されっぱなしなんてな。」
近藤「そういうお前はどうだ?もし戦えば楽勝か?」
総悟「…戦いにくい相手だと思いまさぁ。」
黙々と片付けをしていた山崎だが、そんな二人の会話が聞こえてきて、思わず口を挟んだ。
山崎「お、沖田隊長まで…!?」
総悟の剣術の腕前は極めて高く、純粋に腕前だけで言えば土方をも凌駕する程だ。その総悟が世辞や冗談抜きで相手を称賛する事は、なかなか珍しい事である。その事に山崎は驚いたのだった。
そして総悟は、先程の葵咲の戦いぶりを語った。
総悟「一見隙だらけに見える身のこなしだが、その実、全く隙がない。」
近藤「それがあいつの戦い方なんだろう。華奢な女の子だからこそ使える技だな。自分をひ弱に見せて相手を誘い、攻撃をしかけさせる…。素早く交わす事に慣れた戦い方だった。」
総悟「しかも自分はほとんど動かねぇときた。あれじゃ挑む奴ァ体力を削られるだけでさァ。」
山崎「え?」