第15章 男は女に転がされるぐらいがちょうど良い。
勝負の流れは葵咲が握っていると言っても過言ではない。土方は葵咲のカウンター攻撃を交わすのに必死になっていた。
(土方:パワーもそこそこ…何より早ぇっ!)
自分に部が悪いと思った土方は、一旦葵咲から離れて構え直した。
土方「くっ、ハァ…ハァ…。」
葵咲「・・・・・。」
息を整えて葵咲を見据える土方。
土方に向き合って竹刀を構える葵咲は、余裕の様子で息切れ一つしていなかった。
(土方:しかも息切れ一つしてねぇたぁな…。)
これには流石の土方も苦笑いだ。
そして土方は今度は煽るように葵咲に声を掛けた。
土方「おい、どうした、かかってこねぇのか?」
葵咲「土方さんの方こそ。息が上がってますよ?そんなに動いたんですか?」
その台詞に、何かを気付かされた土方は、心の中でなるほどな、と呟き、体制を立て直して葵咲に向かっていった。
土方「ハァァッ!!」
葵咲「・・・・・。」
自らの面に向かって振り下ろされる竹刀を、葵咲は先程のように自分の竹刀で受け流そうとしたその時、土方はフェイントを掛けて竹刀を既のところで停めた。そして素早く葵咲の手元を狙い、竹刀を打ち付けた。
葵咲「っ!?」
バシィィィン!
土方の竹刀は葵咲の籠手に見事命中。竹刀を打ち付けられた音が道場内に響き渡った。そして思いっきり竹刀を打ち付けられた衝撃により、葵咲は手から竹刀を落としてしまった。
近藤「籠手!!」
葵咲の竹刀が床に落ちたところで、近藤は右手を挙げて戦況を報告した。
そして葵咲は自らの足元に転がった竹刀を拾い上げながら言った。
葵咲「流石副長です。参りました。」
土方「・・・・・。」
勝敗に白星をつけた土方だが、納得のいかないといった表情で、道場の隅へと移動しようとする葵咲を見据えた。