第15章 男は女に転がされるぐらいがちょうど良い。
(山崎:どっちにしろ斬られるゥゥゥゥゥ!!こうなったらやけだ。やってやる!)
山崎「葵咲ちゃん、さっきの言葉後悔しちゃうんじゃない?」
土方の試合開始の合図と共に、山崎は葵咲に向かって行き、竹刀を振り下ろした。
山崎「ハァァァァァ!!」
葵咲「・・・・・。」
葵咲は山崎の勢いには全く気圧されず、山崎の攻撃を軽やかに受け流した。
山崎「…えっ?」
それは一瞬の出来事だった。攻撃を受け流したと同時に、葵咲は山崎の頭部を竹刀で軽く小突いた。
葵咲「はい、面。」
「・・・・・っ!!」
近藤「は、早い…!」
あまりの素早さと軽やかさに、試合を見ていた誰もが息を呑む。局長の近藤でさえ、その華麗な動きに目を奪われた。
葵咲「退君、動きに隙がありすぎ。それじゃ交わしてくれって言ってるようなものだよ。」
葵咲は付けていた面を外しながら、山崎にダメ出しした。あまりの一瞬の出来事に、一番状況を理解出来ていないのは山崎本人だったようだ。ダメ出しされて初めて自分が負けた事に気付き、山崎も面を外しながら、頭を掻いた。
山崎「えっ…あ、うん…ごめん。」
土方「・・・・・。」
試合を間近で見ていた土方は、腕組みしながら考え込む。
(土方:動きに全く無駄がねぇ。こいつと初めて会った時も確か…。)
そう、土方は葵咲に出会った時、一日ボディーガードをしてもらった時の事を思い出したのだ。攘夷浪士に囲まれ、自分が刀を抜くよりも早く、葵咲は持っていた短刀を抜き出し、攘夷浪士の攻撃を受け止めた事を。
そして土方は、自ら進み出て、葵咲に言った。
土方「・・・・・。おい市村。次は俺と試合だ。」
葵咲「えっ…副長と?」
当然の如く、隊士達はどよめく。