第14章 人の話は最後までちゃんと聞くこと。
ちょうどその頃、葵咲と新八の前に現れた攘夷浪士と真選組の戦いに決着がついた。勝者は真選組。その事に安堵した新八は、ふと隣に目をやる。
新八「フゥ。怪我はないですか?葵咲さ・・・・あれ?葵咲さんは?」
隣にいたはずの葵咲の姿がない。新八が真選組と攘夷浪士との戦いに目を奪われている隙に、何処かへ消えてしまったようだ。
その様子を見た隊士達は叫んだ。
「え?…あぁァァァァァ!!しまったァァァァァ!!」
葵咲はその場から抜け出し、辺りをきょろきょろと見回しながら路地裏を進んでいた。
葵咲「・・・・・っ。」
「やァ。鬼ごっこの次はかくれんぼォ~?」
葵咲の前に現れたのは、葵咲の動向を屋根の上から監察していた男。黒髪金メッシュ、全身黒ずくめの謎の男だ。
謎の男を前にして、葵咲の表情はみるみる凍り付いていった。
葵咲「あ・・・・っ!!…あの事、皆に言いに来たの?」
謎の男「アハハッ。アンタ意外と自意識過剰なんだなァ~。」
謎の男は腹を抱えて笑い出す。
葵咲「なっ!!」
謎の男「なァ~んで俺がアンタの為に、わざわざそんな事でここまで足を運ばなきゃなんないわけ?」
葵咲「だ、だって・・・・!」
謎の男は葵咲を見下ろすように顎を上げ、また、両手を挙げながら葵咲に近付いてきた。そして葵咲の目の前で立ち止まり、葵咲の顎を右手でくいっと上げ、自らの顔を唇と唇が触れるくらいの距離まで近付け、小声で言った。
謎の男「心配しないでよ。まだ誰にも言ってないし、今は誰にも言うつもりもないから。」
そう言って男は手を放し、踵を返した。