第14章 人の話は最後までちゃんと聞くこと。
新八と葵咲は歌舞伎町内を逃げ回り、ある程度来たところで足を止めた。
新八「…ハァハァ。ここまで来れば…。」
二人が走り疲れて息を整えていると、そこに、攘夷浪士と思われる男が五人、新八達の前に立塞がった。
「なんだァ?ガキと女か。」
新八「!?攘夷志士!?」
葵咲「っ!?まさか・・・・!」
攘夷浪士の姿を見た途端、葵咲の顔がみるみる青ざめていく。その様子を見た新八は、心配そうに葵咲の顔を覗き込んだ。
新八「葵咲さん…?」
葵咲は一度目を閉じ、何かを決心したように顔を上げて持っていた刀を抜いた。
葵咲「新八君、巻き込んでごめんなさい。でもここからは私が…君を護るから。」
新八「葵咲さん!!」
葵咲は新八を背に、一歩前へと踏み出る。
「なんだァ?女に何が出来るってんだ。」
葵咲「!…私のこと、知らないの?」
「てめぇなんか知るかよ。」
葵咲「そう。…ちょっと、安心した。」
何に安心したのか、新八にはさっぱり状況が掴めなかったが、攘夷浪士のその台詞に安心した葵咲の顔つきは少し変わった。
そんな葵咲に攘夷浪士達は問答無用で斬り込んで来る。だが、葵咲は新八を庇いながら全ての攻撃を軽やかに、また柳の如く滑らかに交わすのだった。
「なっ!この女…!!」
葵咲「攘夷を謳うにしては生ぬるいんじゃない?」
新八「つ、強い…!」
「このっ…!!」
先程の攻撃を交わした際に倒れこんだ浪士のうち一人が、隙をつき、葵咲の懐目掛けて斬り込んで来た。
新八「葵咲さん!危ない!!」
葵咲「!!」
すんでのところで浪士の太刀を受けたのは、真選組隊士だった。
「貴様ら、攘夷浪士だな!?」
「御用改めであるぅぅぅ!!」
真選組隊士が四人、攘夷浪士達を取り囲んだ。
葵咲「貴方達…!?」
「話は後で!!とりあえず今はこいつらが先だ!!」
葵咲「・・・・・。」
新八は今起きている状況が全く分からず、ただその場に立ち尽くすのだった。