第114章 誰にでも優しいより自分だけに優しい方が特別感が増す。
総悟&月詠ペア、走行不能により棄権。
二人が棄権となった為、十分待たずに六番目のペアへ。
レイ「五番飛ばして、次の六番の人…。」
レイの言葉を聞いた日輪がスルスルと前に出る。
日輪「あ、それなんだけど、私も棄権でお願い出来る?さっきは流されてくじ引いちまったけど、この足だからね。」
申し訳なさそうに辞退を申し出る日輪。そんな彼女を見て新八が笑顔を向けた。日輪のペアは新八だった。
新八「僕なら大丈夫ですよ。」
日輪「けど旧館となるとバリアフリーじゃないだろ?」
新八「あ…。」
車椅子を押して参加する気満々だった新八。だが日輪の指摘に、旧館はバリアフリーではなく、階段等も多々あった事を思い出す。小さな段差は何とかなるが、流石に階段を車椅子抱えて移動するのは厳しい。葵咲は困ったように唸る新八を見て、自分の配慮の足りなさを悔いた。
一郎「・・・・・。」
そんな微妙な空気の漂いを眺めていた一郎兵衛。一郎兵衛は少し考えるように顎に手を当て、何かを思い立ったように頷いて自分のペアである妙の顔を覗き込んだ。
一郎「悪ィ、妙。俺、新と代わって良い?」
妙「え?それは別に…。」
一郎「ごめんな。今度埋め合わせすっから。」
妙へとウインクを投げながら爽やかに左手を上げる一郎兵衛。イケメン役者のその仕草に妙は思わずドキリとする。胸元でキュッと拳を握って一郎兵衛の背を見送った。
そして一郎兵衛は新八の傍へと駆け寄り、その肩をポンと叩く。
新八「?」