第113章 肝試しはペア決めが一番盛り上がる。
その頃、妙と九兵衛も自分達の引いたくじの話をしていた。
妙「私は八番。九ちゃんは何番だった?」
九兵衛「僕は四番なんだが…。」
(東城:よっしゃァァァァァァァ!!)
泣いて喜ぶ東城。彼は九兵衛には見えない位置で密かに喜びを噛みしめている。見える場所で喜びを露わにすれば、九兵衛に辞退され兼ねない。ここは肝試しが開始されるまでは大人しく様子を見なければ。それが東城の見解だった。
自分のペアが誰か知らない九兵衛であるが、何やら浮かばぬ表情を浮かべている。それは勿論、妙とペアになれなかった事もそうなのだが、それ以前に不満がある様子。そんな内に秘めたるモヤモヤを九兵衛は葵咲へと打ち明ける。
九兵衛「葵咲ちゃん、何で僕は女側なんだ?僕は妙ちゃんと一緒に回りたかった。」
そう、男として育てられた九兵衛は男側でくじを引きたかったというのが本音。それがそもそもの不満だった。九兵衛は女性側としてくじを渡されたのだ。その事を聞いた葵咲は青ざめた様子で慌てて言葉を返す。
葵咲「えっ!?あっ、ご、ごめんね!そっか、そうだよね、LGBTとかちゃんと考えなきゃいけないのに男女分けとか…。あ~私ってば、ホント幹事として失格だよね…。生まれて来て…ごめんなさい・・・・。」
この上なく酷く落ち込んでしまう葵咲。そこまで落ち込むと思っていなかった九兵衛は、葵咲の落ち込みようを見て今度は逆に慌ててしまう。
九兵衛「えっ!?あ、いや…。」
責めるつもりはなかった。その事を詫びようとする九兵衛だったが、そんな二人の間に突如一郎兵衛が割って入った。
一郎「ダ~メ。八番引いたの俺だから。譲らねーよ。ちゃんとくじに従え、九。」
二人のやり取りを見ていた一郎兵衛が出した助け舟。葵咲を落ち込ませない為に、また、九兵衛にも罪悪感を与えない為に間に入って取り繕うとしたのである。
一郎兵衛の言葉を聞いた九兵衛は、フッと微笑を零して言葉を返した。
九兵衛「ああ。勿論、今回はこれで楽しませてもらうよ。」
葵咲「ごめんね。」
九兵衛「いや、折角準備してくれたのに、こちらこそすまない。最初に言っておくべき事だった。」
一郎兵衛のお陰で二人の間にギクシャクした空気が流れる事もなく、無事解決した。