第113章 肝試しはペア決めが一番盛り上がる。

少し離れた場所にて、お登勢がたまへと声を掛ける。


お登勢「たま、アンタは何番引いたんだい？」

たま「私は九番です。」

山崎「！」


ガーン！
二人の会話を耳をそばだてて聞いていた山崎はショックを受ける。自分とペアではない。自分が引いたくじを見ながら山崎は深くため息を吐いた。


（山崎：ハァ～。まぁ現実はそう甘くはないか。）


そんな山崎を遠からず近からずの距離で見ていた総悟は、自らが引いたくじを見た後、山崎の傍へと歩み寄る。そして山崎の肩にポンと手を置き、口元に人差し指を添えながら その顔を覗き込んだ。


山崎「？」

総悟「こいつァ内緒だぜィ。」


そう言って差し出すのは総悟が引いたくじ。総悟は山崎のくじと交換を持ち掛けて来たのだ。意気消沈しすぎて最初は頭が働いていなかった山崎だが、すぐさまその意味に気付く。


山崎「沖田隊長！まさか…！」


総悟は山崎の言葉に、グッと親指を立てて頷いた。山崎は目に涙を浮かべながらくじを交換し、深々と頭を下げる。


山崎「有難うございます！！このご恩は一生忘れません！！」


山崎からくじを受け取った総悟は、彼に背を向けながら左手をヒラヒラと振る。山崎はそんな総悟の背を見送りながら、ニヤけた表情を浮かべた。


（山崎：ヤッタァァァァァ！これでたまさんと…。）

山崎「ん？」


受け取ったくじへと目を落とす。そこに書かれていた番号は…

『一番』


山崎「・・・・・。」


九番じゃない。
山崎の秘めたる想い、たまへの恋心を知っている総悟はてっきり九番と交換してくれたものだと思っていた。何故一番なのか。トップバッターは勘弁して欲しいという事なのだろうか。総悟の行動の意図が分からず山崎はその場で固まる。

そうして間もなく、近くから将軍とそよ姫の会話が聞こえて来た。