第112章 裸の付き合いで歩み寄るのは心。
近藤はその真意を問うように東城の顔をじっと見つめる。東城はフゥとため息を吐き、次なる言葉を押し出した。
東城「いつ何時、何処で誰と会うか分からない。不測の事態も予測し、常にカメラを持ち歩くのがストーカーというものでしょう!」
近藤「っ!」
東城の言葉に胸を打たれる近藤。更なる衝撃を受け、その地に視線を落とした。
近藤「俺とした事が…!!今回は俺の完敗だ…。」
東城「柳生家での闘い(あの時)は負けてしまいましたが、今回は私の勝利のようですね。」
近藤「ああ。認めざるを得ねぇ。」
柳生家での戦い。トイレに籠った時のあの闘いだ。(コミック第14巻118訓参照)
あの時は妙・九兵衛の写真で拭くか否かの闘いだった。勝敗は紙やすりを選んだ近藤の勝利。あの時は妙への想いが近藤を勝利へと導いた。
だが今回は執念の東城に軍配が。近藤は素直に負けを認める。
だがすぐに立ち上がって東城へともみ手で言葉を紡いだ。
近藤「なのですいませんが、ダビングさせてもらえませんかね?お妙さんが映ってるところだけで良いんで。九兵衛君にはモザイク入れてもらって良いんで。」
東城「仕方ないですね、考えておきましょう。」
切り替えの早い近藤。そんな近藤にハァと軽くため息をつきながらも、東城はまんざらでもない様子だ。
交渉は一応成立し、近藤は小さくガッツポーズを作る。いつまでも二人で争っていても仕方がない。時間は待ってはくれないのだ。もたもたしていたら妙達が温泉から上がってしまう。
二人は結託して塀の隙間から女湯を覗き込もうとする。
そんな彼らの背後にユラユラとした影が。影は二人の肩をトントンと叩く。
近藤「ちょ、何。今忙しいんだけど。」
無視して覗きをやめない近藤と東城。影は再びトントンと肩を叩く。
東城「だから取り込み中ですって。」
無視して覗きを続行していると、更にトントン、トントンと肩を叩かれる。あまりのしつこさに二人は振り向いた。
近藤・東城「だから何…」