第12章 個人情報は何処からか流出する。
その問いかけに対して、顔を強ばらせる伊東。そんな伊東の表情を見つめながら葵咲は続ける。
葵咲「江戸に住む人達を守る為?仲間と士道を極める為?…どちらでもないですよね。」
伊東「フフフ。確かにそのどちらでもないと言えばどちらでもないだろうね。」
伊東は自身の眼鏡をくいっと上げて薄く笑いながら答えた。
葵咲「伊東さん、貴方が本当に求めているものは何ですか?」
伊東「…ここで君に話す義理はないと思うが。」
葵咲「話して下さらなくて結構です。ただ…。」
伊東「ただ?」
葵咲「恐らく、貴方が思っているものと、心の底にある本当の願いとは違うと思います。」
伊東「!・・・・・。」
葵咲の考察に、伊藤は表情を更に冷たくする。
葵咲「手遅れになる前に、早く気付けるといいですね。」
そう言って葵咲は踵を返し、その場を立ち去ろうとした。
伊東「・・・・・。君はあの男に似ているな。」
呟くように言った伊東の言葉を聞いた葵咲は、足を止めて振り返った。
伊東「あの男と同じ事を言う。」
葵咲「…あの男?」
伊東「いや、気にしないでくれ。」
葵咲「・・・・・。では私は失礼します。」
薄く笑みを浮かべる伊東に対し、怪訝に思った葵咲だったが、それ以上は何も言わずにその場を立ち去った。
篠原「このまま帰して宜しいので?」
伊東「かまわん、捨て置け。女中ごときに何も出来やしまい。」
篠原「沖田の件は如何なさいますか?」
伊東「そちらもかまわんよ。副長の座くらいくれてくれる。」
篠原「しかし、それでは土方を排した意味が…」
(中略)