第112章 裸の付き合いで歩み寄るのは心。
葵咲「こうしてお妙さん達と…皆で温泉入れて、しかも満月なんて最高。」
心の底からの本心である。それを聞いた神楽やそよ姫、日輪達の顔が綻ぶ。
だがそんな中、妙だけは首を横に振って言葉を返した。
妙「そろそろ その“お妙さん”っていうの、やめない?」
葵咲「え?」
唐突な言葉に葵咲は妙へと顔を向ける。だが次に言葉を返したのは妙ではなく九兵衛。九兵衛は妙に同意するように言葉を紡いだ。
九兵衛「そうだな、“九兵衛さん”というのも遠い気がする。」
妙「ちゃん付けで良いわよ。」
葵咲「! 妙ちゃんに、九ちゃん。」
急に呼び方を変えるのは何か気恥ずかしい気持ちがある。だが確かに妙達が言うように、さん付けでは少し他人行儀な気がする。その事を指摘して歩み寄ってくれた事は、恥ずかしさよりも嬉しさの気持ちが勝った。
葵咲がその嬉しさを噛みしめたような表情を浮かべていると、今度は日輪が話に入る。
日輪「月詠はツッキーで良いのよね?」
月詠「わ、わっちは…まぁそれでも構わん。」
やっと二日酔い状態が治まって来たのか、月詠は少し照れながらも日輪の言葉に頷きながら湯船へと入る。そして猿飛も腕組みしながらそれに賛同するように頷いた。
猿飛「私もさっちゃんで良いわよ。」
ちなみに猿飛は温泉に入る為に眼鏡は未着用。ドヤ顔を向けた先は葵咲ではなく、近くの植木だった。目が合わない、と思いながらもその言葉を葵咲は嬉しく思う。そしてそよ姫もここで笑顔で会話に参加した。
そよ「私の事もそよちゃんで。」
葵咲「えぇっ!?それは流石に…!」
姫を護る真選組という立場上、おいそれと呼べない呼称だ。葵咲は慌てた様子で手を振るが、神楽がそよ姫の言葉に頷く。
神楽「そよちゃんはそよちゃんアル!」
そよ「公務の時以外はそう呼んで下さい。」
葵咲の立場をも慮ってくれるそよ姫。その気遣いもまた嬉しい。葵咲は笑顔で頭を下げた。
葵咲「みんな…ありがとう。」
今まで以上に打ち解けられた事が何より嬉しい。日本古来から続く裸の付き合いはやはり大切なのかもしれない。