第112章 裸の付き合いで歩み寄るのは心。
皆が気持ちよく湯船に浸かる中、一人だけ浸からず桶に顔を埋めているのは月詠。
月詠「うおぇぇぇ。」
露天風呂に来た事で夜風に当たり、大分酔いも覚めて来た様子。だが飲みすぎの影響で嘔吐を繰り返しているのだ。そんな月詠を見た猿飛は、げんなりした表情で言葉を吐露する。
猿飛「ちょっとツッキー。お願いだからその汚物温泉に入れないでよ?」
その状態で温泉に入られれば折角の温泉が台無しだ。犬をしっしっと追い払うような仕草で猿飛は月詠に来ないよう促す。そんな情景を見ながら日輪は少し呆れた顔で月詠を見やった。
日輪「飲みすぎたのよ、月詠。」
頭もズキズキする。完全なる二日酔い状態だ。だが記憶のない月詠にとってはただの地獄でしかない。
そんな月詠には構わず、葵咲は顔を真っ赤にして猿飛の隣で深く湯船に浸かる。
葵咲「はわわ~。猿飛さんと脇さんと温泉!ここは極楽温泉…!」
脇「何なのん?この娘。」
大のくノ一ファンの葵咲。月詠を気遣う余裕はなかった。そんな葵咲の嗜好を知らない弁財天薫こと、脇薫は怪訝な顔を浮かべている。一方猿飛は今度は顔を真っ赤にして葵咲に向かって叫んだ。
猿飛「やっ、やめなさいよ!変な事言わないでくれる!?」
神楽「さっちゃん照れてるアル。」
猿飛「別に照れてなんかないわよ!」
慕われる事に慣れていない。猿飛の叫びは神楽の言う通り照れ隠しだ。それを指摘された事で猿飛は更に顔を赤くした。
そんな光景を眺めながら日輪とそよ姫がクスクスと笑っていると、ふと空を見上げた妙が夜空を指差しながら声を上げる。
妙「皆見て、今日は満月ね。」
神楽「わぁホントアル!まんまるネ!」
そよ「綺麗ですね~!」
九兵衛「風情があって良いな。」
今回の旅行、とても良いタイミングで訪れる事が出来たようだ。最高のシチュエーションである。しかも真選組の慰安旅行で訪れていた為、本来ならそよ姫と二人での温泉になるはずだった。それがこうして縁あって大勢で温泉を堪能する事が出来た。葵咲には願ってもみない最高の時間である。