第110章 宴会の催し物といえばビンゴ大会。
一郎兵衛はヅラ子達が銀時達の知り合いである事を察し、先程の銀時の返しに一人納得した様子。それ以上先程の銀時の発言を深く追求はしなかった。二人の会話が始まった事で、桂達 かまっ娘倶楽部の面々は館内へ。
そしてそれと入れ違いに館内から葵咲が進行表を片手に出て来た。
葵咲「ごめん、新八君。次の予定についてなんだけど…。」
一郎「葵咲!?」
すぐさま彼女の姿を捉えて声を上げる一郎兵衛。その声掛けに葵咲は声の主へと顔を向ける。一郎兵衛の姿を見た葵咲は、驚きの声を上げた。
葵咲「一郎君?なんでここに?」
一郎「俺らは華月座の奴らと打ち上げも兼ねた温泉旅行。この間千秋楽 迎えたからさ。」
葵咲「そっか、先週までだったね、お疲れさま。」
一郎「そそ。」
華月座初の講演、葵咲と銀時が特別に招待を受けた芝居が先週末に千秋楽を迎えたのである。芝居はどの講演も大入り満員で大盛況。人が人を呼んで追加公演も行なった程だ。幸先の良い走り出しに、温泉旅行でパーッと打ち上げをしようという話になったのである。
満面の笑みを浮かべる一郎兵衛は至極ご満悦の様子。夢が叶っただけでなく、順風満帆なその仕事から笑顔が零れるのも無理のない話だろう。
そんな彼の笑顔に葵咲もつられて笑顔になる。そして何かを思い出したように一郎兵衛が言葉を継ぎ足した。
一郎「あ、ちなみに今日は華月座の奴らだけじゃねーぜ。吉原の連中も来てっから。」
葵咲「そうなんだ!」
流石は兄貴肌の男。華月楼を出た後も後輩達の事を常に気に掛けていたらしい。その心遣いに温かい物を感じた。葵咲が温かい気持ちでほっこりしていると、一郎兵衛は突如葵咲の手をぎゅっと握ってにじり寄った。
一郎「つーかスゲー偶然じゃね?むしろ運命だよな。やっぱ俺と葵咲は運命の赤い糸で結ばれてんだって。」
葵咲「えっ!?ちょ…!」
先程までの穏やかな温かみは吹っ飛んでしまった。突然の口説き文句に葵咲はあたふたとする。そんな二人を遠からず近からずの距離で眺めていた銀時はボソリと呟く。