第109章 旅は道連れ世は情け。
言葉途中で我に返る葵咲。浮ついた心の声に自ら驚く。そして近くの壁へと頭をガンガン叩きつけた。
近藤・土方「!?」
(葵咲:いかんいかん!何考えてんだ私ィィィィィ!!浴衣姿は縁日の時見たじゃん!むしろ その時より劣化してるよ今の浴衣!『仙』て!!カッコ良くない!カッコ良くなんかないィィィィィ!!てかいつもとほぼ一緒!私服と何ら変わらん!気をしっかり持て、私ィィィィィ!!)
突然の謎の行動に度肝を抜かれる近藤と土方。驚きながらも近藤は恐る恐る葵咲へと話し掛けた。
近藤「おい、葵咲…?」
葵咲「あ、すみません。くじを…。」
声を掛けられ、慌てて振り返る葵咲。そして手に持っていた席決めのくじを二人の前に差し出すが…
土方「くじ血まみれなんだけど!?」
額から血を垂れ流す葵咲。その血は持っていたくじにも掛かっていた。引きづらいくじ引きではあったが、二人はくじを引いた。そして近藤は葵咲へと労いの言葉を掛ける。
近藤「何から何まですまねぇな。」
葵咲「いえ。」
笑顔を返す葵咲に対し、心配そうな顔を向けるのは土方だ。土方は眉根を寄せて腕組みしながら葵咲の顔を覗き込む。
土方「ホントに大丈夫か?何か手伝ってやろうか?」
葵咲「えっ!?」
土方「?」
優しい助け船の言葉だけでもグッとくるというのに、それに加えて近付けられる顔。葵咲は火が出る勢いで顔を真っ赤に染め上げる。
言葉を失い、固まる葵咲を前に、土方は再び怪訝な顔を浮かべた。だが葵咲は一瞬で正気を取り戻して土方と近藤の背を押して、宴会場の中へ入るよう促した。
葵咲「だ、大丈夫なので!土方さん達は席に!!」
土方「あ、ああ。?」
二人はくじの番号を見て番号札の置かれている席へと足を向ける。その姿を見届けた葵咲は、ホッと胸を撫で下ろす。そして頬に両手を添えてその熱を感じ取っていた。
そんな葵咲の様子を少し離れた場所から松本が眺めていた。松本は何かを考え込むように顎に手を当て、葵咲の背をじっと見つめていた。
松本「・・・・・。」