第109章 旅は道連れ世は情け。
葵咲は案内された部屋へと入って荷物を置く。だが一息つく暇はない。宴会場にて催し物があるのだ。浴衣に着替える時間もない。葵咲は隊服のまま、宴会場へと向かった。
宴会場に着くと、万事屋の三人が待機してくれていた。三人の姿を見て葵咲はホッとため息を吐く。知り合いが手伝ってくれると思うとそれ以上心強いものはない。葵咲は新八に宴会進行の台本を手渡した。
葵咲「じゃあ悪いんだけど司会進行宜しくね。」
新八「分かりました。」
手際よくきびきびと動く葵咲だが、そんな葵咲を見て銀時は眉根を寄せる。
銀時「何?お前がこの旅行の幹事?」
葵咲「そう、上様に直々に頼まれちゃって。」
銀時「またお前一人で抱えこんでんじゃねーの?」
銀時の心配はそれだった。何かと一人で抱え込んで全て自分だけでこなそうとしてしまう葵咲。また過労で倒れてしまうのではないかという懸念があったのだ。そんな銀時の心配を読み取った葵咲は至極嬉しそうな顔を浮かべる。そして頭を振りながら言葉を返した。
葵咲「ううん、大丈夫。他の皆も手伝ってくれてるし。じゃあ私は入口で皆に席の案内があるから、中の事は宜しくね。」
新八「任せて下さい。」
そうして葵咲は宴会場から出て、入口のところで待機。真選組隊士達の到着を待った。すると間もなく隊士達が続々と現れる。
現れる隊士達の服装はバラバラ。隊服のままの者もいれば、浴衣に着替えている者、私服を着ている者もいた。普段屯所では基本隊服を着用しているだけに、新鮮な光景である。訪れた隊士に、葵咲は座席について案内した。
葵咲「お疲れ様です。席はくじ引きでーす。」
「有難う葵咲ちゃん。」
公平を期して席決めはくじ引きにしたのである。適当に座らせると、いつものメンバーで固まり兼ねない。折角の慰安旅行なのだ。普段あまり接する機会のない隊士同士でも楽しんで欲しいと願った為。隊士達はくじを引いて宴会場内へ。
そして次に訪れた人物の影を見付け、葵咲はその人物へと目を向ける。
葵咲「お疲れさ…まで・・・・」
近藤「ああ。お疲れさん。」
近藤と土方が連れ立って現れた。二人は仙望郷の浴衣を着ている。いつもと違う装いに、葵咲の鼓動はドクンと跳ね上がった。
(葵咲:浴衣姿の土方さん、カッコ良…)
葵咲「ハッ!」