第109章 旅は道連れ世は情け。
土方「…なんでここ選んだ?」
質問を受けた松本は、ニコニコしながら人差し指を立てる。
松本「上様のご要望は、我が国の良き文化を満喫。温泉旅館で本格派の肝試し。日本文化を堪能するには最高のスポットじゃないですか。」
松本は無類のホラー好きとの事。メジャーなものからB級ホラーまで、地球もの、宇宙もの問わず色んなジャンルのホラーが好きらしい。そんな松本の回答を聞いて、葵咲も笑顔で会話に加わる。
葵咲「観光スポット散策は却下されちゃったから、めいっぱい旅館で楽しめる場所を選べたらなって思って。」
松本「二人で計画したんですよ。」
葵咲・松本「ねーっ。」
土方「いや、『ねーっ。』じゃねーよ!」
顔を見合わせて小首を傾げて可愛らしいポーズを取る二人。だが土方としては可愛くもなんともない。むしろイラッとする。
苛立った表情を浮かべて咥えている煙草をギリリと噛んだ。
ちなみに観光スポット散策は上様が危険に晒される危険が高いと見て却下されたのである。
そんな土方を無視して葵咲は入口前で待機している隊士達に声を掛ける。
葵咲「じゃあ皆さーん!荷物置いたら宴会場に集まって下さーい!」
「はーい!」
号令に従い、隊士達は続々と館内へ。
土方「あ、ちょ!待てお前ら!!」
歩き出す隊士達を引き留めようとするも、誰も土方の言葉には耳を傾けない。そんな土方を少し不憫に思ったのか、葵咲が土方の背をポンと押し、グッと親指を立ててドヤ顔を向けた。