第2章 個人情報を守れれるのは己のみ。
葵咲「土方?何処かで聞いたことあるような…。」
泣く子も黙る真選組鬼の副長、土方十四郎。この名を知らない者は少ない。自分の正体が分かれば、真選組副長を護衛するなど、如何に無謀な事をしようとしているか、気付いて貰えるかもしれない。そう一縷の望みも掛け、真剣な表情を葵咲に向けたが、やはり無駄な悪あがきだった。
葵咲「ま、いっか!土方さんですね、宜しくお願いします♪」
土方「・・・・・・・・・・。」
ここまできたら葵咲の反応にある程度予測はしていたものの、やはり肩を落とす土方だった。葵咲が今日一日の護衛をやめることはないと、土方は今日一日の休日を諦めた。その時だ、何かに気付いた葵咲が、また叫んだ。
葵咲「ちょっと待って!!」
土方「今度は何だよ。」
ちょっとやそっとのことでは、もう土方は驚かない。そんな免疫が出来てきた。土方は訝しげな眼差しで葵咲を見る。
葵咲「あそこに人影が!!危ない!下がって!!」
土方「ハァ!?ちょ、何言って…」
土方はそう叫ぶ葵咲の視線の先を見てみた。確かに人影はあったが、ただの通りすがりの一般人である。どう見ても攘夷浪士や犯罪者には見えない。どう反応していいか分からない土方は、ただ唖然とし、思わず半歩後ずさった。その時だ、また葵咲は叫んだ。
葵咲「危ない!!!」
今度はなんだ!?そう言わんばかりの表情で土方は葵咲を見る。
葵咲「・・・・・石ころです。」
これには流石の土方もしびれを切らしてツッコんだ。
土方「アホかァァァァァ!!ふざけんな!んなもん気にしてたら日が暮れるわ!!つか道歩けねぇだろうがァァァ!!」