第108章 心霊スポットには身代わり人形が必須。
将軍から直々に慰安旅行計画を授かった葵咲は、松平の許可が下りていないにもかかわらず、松本クリニックへと突っ走る。今回の主役は将軍とそよ姫だが、松本の歓迎会も兼ねている為、彼も主役の一人となる。故にその事を早く告げたかったのだ。
葵咲は軽快なステップで医院の敷居を跨ごうとする。だがその勢いのあまり、入口で女性と肩がぶつかってしまった。
葵咲「ごめんなさい。」
「いえ、こちらこそ。…あら、貴女もしかして。」
葵咲「え?」
声を掛けられて顔を上げる葵咲。女性の顔に見覚えが…。
記憶を辿った先の人物像と結びつける。相手が誰だか思い出した葵咲は、ハッと声を上げた。
葵咲「…あ!貴女は確か、華月楼の(あの時)の!」
その女性とは、華月楼で葵咲に嫌がらせをした女性。
葵咲は華月楼へ客として潜入した際、菊之丞のファンに目を付けられた。葵咲に嫌がらせをした事で、その時彼女は菊之丞に制裁を加えられて出禁に。その後、彼の気を引く為に獅童へと乗り換えようとしたが、それを見抜いた獅童に脅かされ、危うく怪我を負いそうになったところ葵咲に助けてもらった、その女性である(詳しくは雪月花第65訓参照)。
印象的な出来事だっただけに葵咲もはっきりと覚えていた。
彼女は葵咲の恰好を見て声を上げる。
「! その格好…!」
葵咲「あ、はい。一応真選組隊士してます。」
「そうだったの。」