第107章 自分の為に頭を下げてくれる人には心惹かれるものがある。
土方「…まぁ折角の長期休暇も結局仕事になっちまったしな。」
葵咲「いや、それは全然大丈夫なんですけど、その時の、あの…。」
土方「あん?」
葵咲は再び土方の方へと向き直り、おずおずと見上げる。そんな葵咲の顔を見下ろす土方。再び目があった事で葵咲はドキッと胸を高鳴らせた。そしてまた思いっきり視線を反らす。
葵咲「いえ!なんでもござーません!!」
土方「???」
(葵咲:あ~…何やってんだろ、私…。)
自己嫌悪に陥る。頭の中がぐるぐるする。思考が追い付いていない。葵咲は土方の隣で再び落ち込むように肩を落とした。
葵咲「…ハァ。」
土方「・・・・・。」
ポンッ。
葵咲「!」
慣れない感覚に葵咲は目を見開く。見上げると土方は心配そうな顔を浮かべながら、葵咲の頭に手を置いていた。
土方「何があったか知らねぇけど、あんま一人で抱え込んで無理すんなよ。」
葵咲「っ!」
きゅっとなる葵咲の胸。土方は葵咲から回答を求めているわけではない。ただただ優しい言葉を掛けて、先に歩き出した。葵咲はその背を見つめながら胸元できゅっと拳を握る。
(葵咲:今その言葉は…くるなぁ…。)
そうして二人は将軍の待つ城へ登城した。