第107章 自分の為に頭を下げてくれる人には心惹かれるものがある。
登城した二人は通された部屋で正座をして将軍の到着を待つ。少しして将軍とそよ姫が室内に入って来た。
茂々「二人とも、よく来てくれた。」
そよ「お久しぶりです、葵咲さん。」
葵咲「上様、そよ姫様…。」
二人の顔を見た途端、一気に不安が押し寄せてくる。二人が座につくまで土方と葵咲は頭を下げた。そして座に腰を下ろした将軍は葵咲達に笑顔を向けた。
茂々「楽にしてくれ。早速で申し訳ない。例のイベントの件なのだが…」
将軍の言葉を聞いた葵咲と土方は顔を上げた。二人の顔を見た将軍は早々に本題へと入ろうとする。要件は分かっている。故に葵咲は先に自らが報告するべく頭を下げようとした。だがその時・・・・
葵咲「申…」
スッ。
葵咲の行動を遮るように、頭を下げようとする手前に土方が手を出してそれを制した。
葵咲「!」
葵咲の動きが止まったと同時に、土方はとても綺麗な姿勢で深々と頭を下げた。
土方「上様、誠に申し訳ありません。預かっていた警備体制の提案についてですが、まだ着手出来ておらず。全ては休暇明けで多忙だった市村に配慮出来ていなかった俺の責任です。」
茂々「!」
葵咲「!?」
想像していなかった土方の行動に、葵咲は大きく目を見開く。
半沢直樹でも知られるように、人に頭を下げる事はなかなかに難しい。しかも自らの失態でもない仕事に対して全責任を負って謝る事は尚更。確かに上司として、という意味合いでは管理責任はある。だが関与していない仕事に、更に言うなればあのプライドの高い土方がだ。全ての責任を負おって謝罪するその姿に、葵咲の鼓動は大きく脈打った。
(葵咲:プライドの高い土方さんが…。私なんかの為に・・・・?)