第107章 自分の為に頭を下げてくれる人には心惹かれるものがある。
宇宙船は江戸から少し離れた場所にある宿場町へと降り立つ。来るもの拒まずの荒くれ者も集う宿場町。勿論、普通の一般人や観光客もいる。時刻は夜。だが夜だと感じさせない程の灯りが町を賑わせていた。
町の外れに宇宙船を着陸させて翡翠は高杉を降ろす。そしてその背に話し掛けた。
翡翠「完成したらまた連絡差し上げますので。」
高杉は振り返らずに町の人ごみへと消えてゆく。その背を見送った翡翠はフッと笑みを漏らして宇宙船の中へ。宇宙船は再び浮き上がり、宇宙空間へと戻って行った。
翡翠は自室へと戻り、デスクに座って何やら書類をしたため始める。そうして間もなく、ドアをコンコンとノックする音が響いた。翡翠が中に入るよう促すと、扉を開けた先には玲央の姿があった。
玲央「もう帰しちったの?最終交渉は?しなくて良かったのかよ?」
どうやら高杉との交渉を聞いていた様子。その内容に気になるものがあった玲央は翡翠の元へと訪れたのだ。そんな玲央からの質問に、翡翠は持っていた万年筆を置き、机の上に肘を付きながらフッと笑みを零した。
翡翠「それは“そうせざるを得ない状況になった時”が最適でしょう。」
玲央「あ~。な~るほど。」
納得した様子の玲央は、それ以上特に語る事もなく、翡翠の部屋を後にした。