第107章 自分の為に頭を下げてくれる人には心惹かれるものがある。
宇宙空間、鐡の母船。玲央達が帰還してすぐに華音も戻り、会議が行なわれた。
そしてその数日後、この戦艦に招かれたのは一人の男。翡翠が男を来賓室へと丁重に案内する。男を上座へと座らせ、翡翠は向かい側に座った。二人は雑談なく本題へと入る。
翡翠「高杉さん、わざわざご足労頂いてすみません。今日は例の薬の進捗についてお話ししようと思いまして。」
招待されたのは鬼兵隊総督の高杉晋助。高杉は何も答えず、すました顔で翡翠を見据える。何かを見定めるようなその目に、翡翠は一度視線を合わせた後、深く目を瞑りながら言葉を紡いだ。
翡翠「近日中に薬は完成すると思います。」
高杉「ほぅ。副作用の件は?どうなった?」
高杉からの指摘に、翡翠は一瞬眉をピクリと動かす。だがすぐに表情を変え、クスッと笑って高杉へ微笑み掛けた。
翡翠「…問題ありませんよ。しっかりと対策も練っていますから。」
高杉「・・・・・。そうかぃ。」
高杉は特に何も追及しない。フッと笑みを漏らしながら目を瞑った。その様子を見た翡翠は電卓を叩いてそれを高杉の前に提示する。
翡翠「薬をお譲りする金額についてですが、以前田中さんから値引き交渉がありました分、差し引かせて頂いて…これくらいで如何でしょう?」
高杉「まぁ妥当な額だな。」
翡翠「有難うございます。ではこちらで進めます。」
交渉成立。これ以上話す事はない。高杉と翡翠は席から立ち上がった。