第106章 観光は親しい相手とするからこそ楽しめる。
葵咲「土方さん、今まで本当にお世話になりました。」
土方「あ?」
仕事について試案していた土方。葵咲の突然の発言に片眉を上げる。葵咲は顔を上げて土方を見据えた。
葵咲「この処罰、謹んでお受けする所存。切腹する覚悟にて、上様へ直々に謝罪に行かせては頂けないでしょうか。」
土方「いや、早まりすぎじゃね?確かにお前に依頼のきた仕事だが、警備体制の提案なんてのは他の奴でも出来る。明日持ってくのは無理でも手分けしてやりゃ当日までに何とかなんだろうし。とりあえず上様に話してみねぇと始まんねぇだろ。」
葵咲「けど…。」
確かに葵咲の発言は早まりすぎだ。まだ何か言われたわけではない。イベントが明日に控えているわけでもない。その事を告げる土方だが、葵咲は不安げな顔を浮かべている。
そんな葵咲の顔を見ながら土方は小さく息をつき、葵咲へと言葉を掛けた。
土方「俺も一緒に謝りに行ってやっから。」
またもや一瞬思考停止する葵咲。土方からの思わぬ一言に思考が追い付いていなかった。だが少ししてその言葉の意味を理解し、身体を大きくのけぞらせて大声を上げる。
葵咲「えぇっ!?そんな!土方さんを打首獄門にさせるわけには…!」
土方「なんで打首前提なんだよ。…まぁお前に任せっきりで進捗聞いてなかった俺にも責任はあるしな。」
土方も近藤に言われるまですっかり忘れていたのだ。人の事をどうこう言える立場ではない。その事を申し訳なさそうに告げながら自らの首の後ろを撫でる土方。だが葵咲は首を横に振りながら両手を前に出して拒否の姿勢を見せた。
葵咲「いえ!全ては失念してた私が悪いんですから!むしろ任せてもらえて嬉しかったし、土方さんまで打首になる必要はないです!!」
土方「一旦その打首から離れろ。」
葵咲は自分が打首獄門に処されると思い込んでいるようだ。そこはマイナス思考の彼女からすれば、らしいと言えばらしいのだが。土方はそんな葵咲を制して向き直る。
土方「とりあえず明日上様んとこ行くぞ。」
葵咲「・・・・・っ。」