第106章 観光は親しい相手とするからこそ楽しめる。
場所は変わって同じく真選組屯所内、事務室。
葵咲は勘定方の仕事で領収証等の整理をしながらパソコンに向き合っている。ネットバンキングにて支払手続きを行なっていた。一通りの支払い手続きが終わり、大きなため息を吐く。
葵咲「はぁ~~~~~。」
パソコンをシャットダウンし、書類を持って部屋から退室。自室へと向かいながらも、ぼーっと考え事をしていた。その考え事とは仕事の事ではない。
(葵咲:今のところ私、何もお咎めなしなんだけど、良いのかな。)
頭に浮かぶのは先日の郷帰り旅行の事。攘夷志士である桂と行動を共にしていた件。あの後なんやかんやで うやむやとなり、特に処罰を受けていない。始末書さえ出していない状態だ。そして気になっているのは処罰の事だけではない。それは…
(葵咲:それに…土方さんのアレ、どういう意味だったんだろ。何であんなに顔真っ赤にしてたの?あれってやっぱり、ヤキモ…?いやいや、それはないって。土方さんが私に対してヤキモチ妬く意味分かんないし。だってそれじゃまるで土方さんが私の事を好・・・・いやいやいや!それはないって!流石に!!)
ブンブンと首を振りながら自問自答を繰り返す。モヤモヤする。そして葵咲は立ち止まった。
葵咲「・・・・・。」
雑念を取り除く為に無になろうと試みるが、うまくいかない。再び歩き出すと頭に浮かんでくるのは土方の事。
(葵咲:土方さんって私の事どう思ってるのかな。…いやいやいやいや、ただの部下!それ以上でも以下でもない!っていうか どう思ってても私には関係ないじゃんか。)
葵咲「・・・・・。」
土方は葵咲(じぶん)の事など何とも思っていないだろう、という結論に辿り着いて軽く落ち込む。
再び立ち止まる。
葵咲は書類を手に持ちながらも、頭を抱えるようにその手を挙げた。
(葵咲:あ~~~も~~~。なんでこんなに気になるんだろ。…いかんいかん、仕事中、仕事中。集中!集中!全集中!!)
自らに活を入れる葵咲。気を引き締め直して今からは部屋に戻って書類整理を行なおう。そう思って歩き出したその時、背後から声を掛けられた。