第106章 観光は親しい相手とするからこそ楽しめる。
そして本題へと戻り、松本が先程の土方の質問に答える。
松本「付近の聞き込み調査が難攻していたんです。」
近藤「ああ。姿変えられてた連中は記憶がなかったんだっけか。」
ここで先程の松本からの報告を思い出す。薬を投与された村人達はその間の記憶を失うと言っていた。それでは確かに聞き込み調査もままならないだろう。納得して頷く近藤を横目に、松本は難しそうな顔を浮かべて頭を振った。
松本「いえ、まぁそれもあるのですが…。」
山崎「村民達の緒方への狂信が凄くて…。」
近藤「そういや葵咲が、慕われてるみたいだって言ってたな。」
げんなりする山崎と松本を見て、近藤は以前葵咲が話していた緒方と言う人物像について思い出す。子どもを探していた母親が緒方の言葉を鵜呑みにして全てを任せてしまう程の信頼度。それだけの信頼を得ていれば、突如逮捕されたとなると反感を買うのも無理のない話だ。
近藤は二人の意見に納得の姿勢を見せる。だが、その飄々とした態度に松本は深くため息を吐く。
松本「そんな可愛らしいレベルじゃないですよ。」
土方「どういう事だ?」
なおもしんどそうに吐き出される言葉に気になるものがあった。土方は眉根を寄せて松本と山崎に話の続きを促す。