第106章 観光は親しい相手とするからこそ楽しめる。
場面は真選組屯所へと戻って再び会議室。
松本から萩での取り調べについて聞いた近藤達は顔を見合わせ眉根を寄せる。
松本「緒方はあの工場での研究は“出てきたものが全て”、と言っていましたが…。」
近藤「葵咲に盛られた薬は独自に作ったもんじゃねぇって事か?」
松本「いえ、恐らく濁しているだけだと思います。調査途中の現段階では、まだ何とも言えません。緒方が持っていた注射器を押収したので調べてみますが、注射器の中にはほとんど残量なく、調べるのにも時間が掛かると思います。」
近藤はその人柄からか、緒方の発言をそのまま素直に受け取る。だが松本は疑心暗鬼の様子。緒方の発言について全てを信用してはいないようだ。最も、近藤は現場にいたわけではない為、緒方の表情等は知らない。直に対面した松本だからこそ感じ取った事もあるだろう。近藤は松本の発言に頷いた。
山崎「葵咲ちゃん、検査は受けたんですか?」
山崎も松本もつい先程戻って来たばかり。葵咲の様子が気になった。その質問を受けた近藤は、至って平然とした様子で答える。
近藤「ああ。医者の見立てでは特にこれといった異常はないみてぇだが。」
松本「後で私も検査結果を見てみます。当人に特に違和感等がなく、検査医も異常なしと言うのであれば今のところは大丈夫でしょうけれど。緒方も身体に害をなすものではない、と言っていましたが、後々効力が出る可能性もあるようですので様子見ですね。」
緒方が葵咲を気に掛けている事に嘘はなさそうだった。故に今すぐどうこうの問題ではなさそうだが、油断は出来ない。緒方の目的が分からない現状、彼の言葉を鵜呑みにするのは危険だ。
今も緒方の取り調べは続いている。葵咲に投与された薬については、何か分かれば見廻組がすぐに知らせてくれるとの事だった。