第105章 備えあれば憂いなし。
萩での事件収束後、見廻組と山崎、松本は事件後の調査の為に現地に滞在していた。だがその調査もひと段落し、二人は屯所へと戻って来た。
山崎「山崎、松本、只今戻りましたー。」
近藤「おう。ご苦労だったな。」
二人を出迎えたのは近藤と土方。待ってましたと言わんばかりに四人は会議室に入る。近藤は余談なしに本題へと入った。
近藤「で?どうだった?」
松本「調査の結果、薬や工場について様々な事が分かりましたよ。」
土方「順に報告してくれ。」
報告を促され、松本はコクリと頷いてから早速報告へと移る。
松本「まず、鐡があの工場で精製していた薬は“合成薬”。その名のとおり、他種族の特徴を人間の肉体に合成する事が出来る薬です。」
土方「それで俺達が一戦交えた緒方はオオトカゲみてぇな形態になったって事か。」
松本「ええ。」
土方は緒方との交戦を思い出すように目を細めて空を仰ぐ。緒方は土方、桂、葵咲と交戦した際、自らの腕に投薬してその形態を変えた。それは大蛇、オオトカゲと合体したような形態だった。当時の情景について思い返しながら土方は頷く。そして松本は薬についての説明を続けた。
松本「この合成薬は大きく分けて二種類あります。一つは村民達に投与されていた薬。投薬すればその薬に含まれる他種族の特徴、一種類を取り入れる事が出来ます。ですが副作用としてそれと同時に自我を失います。また、その時の記憶もなくなるようです。」
近藤「それで鐡の連中に操られて徘徊してたってわけか。」
近藤もまた、土方と同じように当時の情景を思い出しながら腕を組んで唸る。そんな近藤を横目に、土方が松本へと話の続きを促した。
土方「もう一つは?」
松本「緒方が接種していた薬、こちらは一種族以上の特徴を取り入れられるようです。自我は失いません。“合成薬・改”、といったところでしょうか。恐らく、近藤さん達が戦った玲央という男が接種したのもこちらの薬でしょう。そして合成薬と合成薬・改、二つの薬には大きな違いがもう一つあります。」
土方「なんだ?」
続きを促され、松本は眉根を寄せる。一呼吸置き、ゴクリと唾を飲みこんでから近藤と土方へ真剣な眼差しを向けた。