第105章 備えあれば憂いなし。
豊満な胸に包まれた紗羅は窒息死しそうな勢いだ。そんな紗羅の訴えは聞き入れずに瑠香は紗羅を抱き締めたまま、今度は玲央へと顔を向けて冷たい視線を送る。
瑠香「双子なのに、ほーんと全っ然似てないわよねぇ。紗羅の素直さが少しでもあればアンタも可愛いのに。」
玲央「うっせー!!」
四人がいがみ合いつつも和やかな雰囲気で話していると、青髪の青年がコツコツと歩み寄って来た。
「四人とも、おかえりなさい。」
青年の姿を見るや否や、玲央はその場に立ち上がって深々と頭を下げる。
玲央「…悪ィ、翡翠(ヒスイ)。やらかしちまった。これは第五師団団長である俺一人の責任だ。」
紗羅「悪いの、玲央だけじゃない。私も。」
玲央「お前は関係ねーよ。」
紗羅「ううん、私も。」
双子の玲央と紗羅が庇い合う姿を見て、翡翠と呼ばれた青年はクスリと笑う。サラサラの青髪は前髪が長く、右目はその髪で隠れている。身長は土方ぐらい。だが土方よりも細身で、関西風に言うとシュッとした感じだ。
翡翠は笑みを零しながら首を少し傾ける。
翡翠「美しい兄妹愛はそれぐらいに。」
玲央「ばっ!そんなんじゃねーよ!」
どうやら無意識だったらしい。玲央は顔を真っ赤にして翡翠に突っかかった。これ以上からかっては話が進まなさそうだ、そう思った翡翠は頭を振って玲央の頭にポンと手を置く。
翡翠「別に貴方達に責任を押し付けたりしませんよ。後始末は私が適当にしておくので大丈夫です。」
玲央「…手間掛ける。」